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泌尿器科がん

2023年11月10日

泌尿器科では高齢の患者さんが多く、悪性腫瘍(癌)の患者さんの割合が高いのが特徴です。悪性腫瘍の診療においては癌そのものに対する治療および再発の予防と発見が主体となりますが、各臓器によって診断・治療の考え方は異なります。

泌尿器科悪性腫瘍

近年、平均寿命が延長し高齢化社会が訪れ、治療対象となる病気の内容も変わってきました。良性・悪性腫瘍の発生頻度も増え、すでに昭和50年代には、死因の第1位が悪性新生物、いわゆる癌となり、平成17年の統計では、2位の心疾患16%に大きく水をあけ、死因の30%を占めている状況です。

泌尿器科関係の腫瘍についても同様で、最近では、前立腺癌が急激に増加し、マスコミにもよく取り上げられています。血尿が重要な症状である膀胱癌や、検診で発見される事の多い腎癌もしばしばみられます。頻度は少ないですが、進行癌になりやすい腎盂尿管癌、10~20歳代の若年者にも発症するという特徴のある精巣腫瘍なども、泌尿器科で治療する病気です。しかし医学の進歩が、癌の早期発見・早期治療を可能としているのも事実です。

腎癌(腎細胞癌)

腎癌(腎細胞癌)について

腎臓は、血液中の身体の老廃物をこして尿をつくる、重要な臓器です。大きさは、にぎりこぶしくらい。身体の後ろ側、背骨の両側に一個ずつあります。両方の腎臓が障害された状態は腎不全といわれ、血液透析などの治療が必要になります。ボクシングでは、脇より後ろ側を叩いてはいけないルールがありますが、これは腎臓を保護するためのようです。

この腎臓にも、他の臓器と同じように腫瘍が発生します。良性の腫瘍もありますが、大部分は悪性腫瘍の「腎細胞癌」と呼ばれるものです。癌になる率は、人口10万人当り男性10人、女性5人程度で、やや男性に多く、50~60歳代が好発年齢です。喫煙、肥満、高血圧症は、この癌の発生の重要な危険因子で、今、巷で話題のメタボリックシンドロームの予防は、腎癌の予防にもつながるかもしれません。

症状について

ひと昔前、腎癌の三大症状は「血尿・痛み・お腹の腫瘤」といわれていました。しかし、これらの症状で発見されたものは、既に進行癌である場合が多く、予後も不良でした。最近では、多くの方々が健康診断を受けられるようになったため、無症状のうちに、尿検査で潜血を指摘されたり、超音波検査で偶然に小さい腫瘍を指摘されたりして発見される場合が多くなりました。腎癌全体の70%程度の方が、無症状で発見されているという報告もあります。まさに早期発見・早期治療が可能となり、予後も良好な患者さんが多くなってきています。

診断について

診断は、画像検査が中心となります。腹部超音波検査や腹部コンピューター断層撮影検査(CT)が診断に有用です。磁気共鳴画像診断検査(MRI)も、その質的診断や周囲への浸潤の程度を調べるのに有効です。これらの診断法が普及するにつれて、以前行われていた血管造影検査は、特殊な場合を除いてあまり行われなくなりました。腎癌は肺や脳に転移しやすいので、診断の際にはこれらのCT検査もあわせて行います。

治療について

治療の主体は手術です。抗癌剤や放射線療法があまり有効でないため、いかに早く腫瘍を発見して、小さいうちに、かつ転移のないうちに癌を取り除くことが出来るかが、治療の鍵となります。開腹により、腫瘍のある片方の腎臓を全部摘除する「根治的腎摘除術」が基本ですが、小さい腫瘍に対しては、腎臓を部分的に切除したり、最近では、お腹を大きく切らずに腹腔鏡を用いて手術したりする事も行われています。

他の悪性腫瘍と違い、転移のある癌に関しても、腎癌の場合には腎摘除術が行われます。その後、インターフェロンやインターロイキン2を使用した免疫療法を行って、転移巣を治療していきます。

腎盂尿管癌

腎盂尿管癌について

腎臓でつくられた尿は、腎盂に集められ、尿管を通して膀胱に導かれます。この尿の通路に発生する癌を腎盂尿管癌と総称します。この粘膜は膀胱と同じ移行上皮でおおわれており、膀胱癌を併発したり、のちに膀胱内再発を起したり、逆に膀胱癌の術後に発生することもあります。

50~70歳代に多く、性別では2:1で男性に多いとされています。比較的聞きなれない癌ですが、その発生頻度は泌尿器科癌の中で多いとされる膀胱癌や前立腺癌の1/5程度と言われています。

症状について

症状のうちで最も多いものは、血尿で、多くは痛みなどの他の症状を伴わない「無症候性血尿」と言われるものです。腫瘍から出た血液や腫瘍そのものが、尿管をふさいで尿の流れをせき止めた時には、腎盂や尿管が拡張して「水腎症・水尿管症」を生じ、背中やわき腹の痛みを出すこともあります。腎癌同様に、最近の検診の普及により、尿潜血や超音波検査での水腎症を指摘されて発見される患者さんが多くなってきています。

診断について

尿検査により血尿の有無を確認、さらに尿細胞検査により癌細胞の有無を調べます。超音波検査では、下部尿管の情報は得にくいのですが、腎盂や上部尿管の腫瘍や水腎・水尿管の有無を調べることができます。造影剤を注射して行う「排泄性尿路造影検査」やCT検査により、腫瘍の位置や大きさ、広がりを確認します。

膀胱鏡検査では、膀胱内に腫瘍が発生していないかを確認することができ、されにそこから尿管に細いカテーテルを挿入して、尿管を逆行性に造影してレントゲンで観察したり、尿管鏡により直接腫瘍を観察・生検したりすることで、診断を確定させていきます。同時にCT検査により転移の有無を調べることが必要です。

治療について

治療の主体はやはり手術療法です。腎盂尿管腫瘍は尿の流れ道に多発性に発生したり再発したりするため、腎臓や尿管を残さずにとる必要があることから、転移のないものについては、尿管の膀胱への出口部もあわせて、開腹により切除します(腎尿管全摘除および膀胱部分切除術)。しかし、転移を有するものに対しては、抗癌剤を用いた化学療法を中心に治療を行っていきます。

尿管の壁は非常に薄いため、壁外に癌が浸潤しやすい傾向があります。したがって、早期発見・早期治療が重要です。また、先にのべましたように、膀胱への再発もしばしばみられるため、術後の経過観察も十分行っていく必要があります。

膀胱癌

膀胱癌について

膀胱は、腎臓でつくられた尿を体外に排泄するまでの間、一時的に貯めておくための臓器です。恥骨の裏側にあり、外側は筋肉、内側は粘膜でおおわれ、伸縮自在で300cc前後の尿を貯めることがます。この膀胱にも腫瘍が発生します。多くは膀胱内側の粘膜面から発生するため、後でお話しするように症状が出やすく、それを放置しなければ早期のうちに発見・治療が可能となります。

膀胱癌の好発年齢は50~70歳代で、特に70歳代は全体の30%を占めます。男性が女性の約3倍、喫煙者は非喫煙者の2~4倍のリスクがあり、高齢・男性・喫煙者は要注意といえます。この膀胱癌は、泌尿器科の癌の中では前立腺癌と並んで多い腫瘍で、2001年の全国統計において癌で亡くなられた患者数は、前立腺癌の7645人に次いで5046人と多く、癌全体の死亡の1.68%を占めています。それだけ早期発見・早期治療の必要がある病気といえましょう。

症状について

症状は、何と言っても『血尿』、これに尽きます。尿路結石症や膀胱・尿道炎などでも肉眼でもわかる血尿が出ますが、これらの病気では、大部分の患者さんで痛みを伴います。しかし膀胱癌の場合、あまり痛みを伴わない一過性の「無症候性血尿」の場合が多く、「1日でおさまったので様子を見よう。泌尿器科には行きたくないし・・・」ということで、放置されることも多いようです。

もちろん、血尿による刺激や、感染を併発することで、頻尿、残尿感、排尿時の痛み等の症状が出る場合もあります。出血の程度が強い場合には、血液が固まって排尿できなくなる「膀胱タンポナーデ」という状況になることがあり、すぐに適切な処置が必要となります。また、健康診断の尿検査での潜血反応陽性が、発見の要因となることもあります。健康診断の受診は、膀胱癌の早期発見・早期治療のための重要なポイントと言えます。

診断について

尿検査において、血尿の有無を確認、さらに尿細胞検査により癌細胞の有無を調べるのは、腎盂尿管腫瘍と同様です。画像検査では、膀胱に尿がたまった状態で超音波検査や、膀胱内にオリーブ油を入れて行うCT検査により、膀胱内の腫瘍を診断することができます。超音波検査は、痛みを伴わないで行うことができる、簡便かつ有効な検査です。CT検査では、腫瘍の位置や大きさ、広がり、転移の有無を調べることができます。

しかし最も重要な検査は膀胱鏡検査です。膀胱内に内視鏡を入れて、直接観察するものです。膀胱腫瘍は、膀胱内に多発する場合もあり、腫瘍の位置、形状、広がりのみならず、画像診断が不可能な小さい腫瘍や複数の腫瘍の有無、軽微な粘膜の変化も、この検査により確認することができます。腎盂尿管癌の項でもお話しましたが、膀胱内のみならず腎盂や尿管の腫瘍が併発していないか、排泄性尿路造影検査も行う必要があります。

治療について

膀胱癌は、膀胱の粘膜表面から膀胱内に突出するように発育する「表在性膀胱癌」と、膀胱壁を深く貫くように進展する「浸潤性膀胱癌」に大きく分けられます。

表在性のものは、悪性度が比較的低く、癌の根が浅いため、尿道から内視鏡を入れて、電気メスで癌の根を残さないように切除する「経尿道的膀胱腫瘍切除術」を施行します。表在性の癌は、血尿などの症状が早期から出現し、深く浸潤しにくいことから、このような方法での治療ができ、転移もしにくい場合が多く、予後は良好とされています。

しかしこの種の癌は、膀胱内に再発しやすいという特徴があります。したがって切除治療の後、癌の組織を確認し、組織型に合わせて適切な抗癌剤やBCGなど薬物の膀胱内注入療法を行って、再発を予防し、定期的に内視鏡検査をして、再発の有無を調べていく必要があります。

浸潤性のものは、表在性のものに比べ悪性度が高く症状も出にくい場合もあり、膀胱の筋肉層や壁の外に浸潤したり、他の臓器に転移をおこしたりする特徴があります。経尿道的に切除が困難な場合には、膀胱を摘除して尿の流れ道を作り直す「膀胱全摘除術および尿路変更・再建術」が必要となり、さらに進んだ状況であれば、抗癌剤を用いた化学療法や、放射線療法を駆使して治療を行っていくことになります。

前立腺癌

前立腺癌について

前立腺は、膀胱のすぐ下にあり、尿道を取り囲むように存在しています。すぐ後ろには直腸があるので、泌尿器科などで前立腺を診察する際には、肛門から指を入れるとすぐ触れることができます。前立腺は、精巣(睾丸)から分泌される男性ホルモン「テストステロン」の働きにより増殖が起こります。

前立腺癌の発生は、人種や地域により非常にばらつきがあります。とくに欧米では、男性の悪性腫瘍の発生率、死亡率は、一二を争う状況です。日本においては、それに比べるとまだまだ頻度は少ない腫瘍と言えますが、1975年頃にその罹患率は人口10万人に対し4人程度でしたが、1995年には約10人と、著明に増加しており、現在もこの傾向は続いています。

このことは高齢化や環境・食生活の欧米化が、この急激な発生率の上昇に関与していると考えられています。わが国における2002年の統計では、前立腺癌が発見される平均年齢は、近年早期発見がされるようになったとはいえ、それでも69.8歳で、他の癌と比較して高齢者に多い傾向のある癌と言えます。

症状について

前立腺癌は、前立腺の一部の細胞が癌化して次第に大きくなっていくため、すぐには排尿に関する症状は出てきません。もちろん、癌が大きくなれば排尿困難などの症状も出てきますが、前立腺癌が発生してくる年齢においては、大部分の方が前立腺肥大症となっており、排尿に関する症状は肥大症からくるものであることが多く、その検査の過程で癌が発見されるという方々が増えてきています。癌の進行により、血尿がみられたり、骨への転移による症状として腰痛や神経痛などで発見されることもあります。

診断について

直腸診、超音波検査、腫瘍マーカーの前立腺特異抗原(PSA)の採血検査、この3つが重要です。直腸診により、前立腺の形状を調べ、肥大症との鑑別や癌の進行の程度を判断することができます。超音波検査では、前立腺の大きさや形を観察するだけでなく、内部の腫瘍の位置や周囲への浸潤の有無を推定することができます。3つの中で最も有用なのは、やはり腫瘍マーカー「PSA」です。この採血検査により、癌の可能性を判断します。しかし、大きな肥大症や前立腺の炎症でもPSA値の異常がでる場合もあるので、注意が必要です。当院では採血後、約40分程度で結果を至急で確認することが出来るようにしています。

以上の検査で癌が疑われる場合には、積極的に前立腺の生検を行って、癌の確定診断をします。肛門から直腸に超音波の機械を挿入して、前立腺を観察しながら、組織を専用の生検針を用いて採取し、癌細胞が存在するか否か調べます。当院では前立腺全体から12カ所、さらに疑わしい場所がある際にはその部を狙って追加して組織を採取し、効果的に、かつ見落としが無いように検査しています。

癌が発見されたときには、CT検査などで癌の広がりや転移の有無を確認します。前立腺癌は骨に転移しやすい特徴があるため、レントゲン検査や骨シンチグラフィ検査なども行うことが必要です。

治療について

前立腺癌の治療は、大きく手術療法、内分泌(ホルモン)療法、放射線療法、化学療法に分けられます。癌が前立腺内に限局している早期のものにおいては、手術療法の「根治的前立腺摘除術」が行われます。全身麻酔下に開腹し、前立腺と精嚢を病巣ごと摘除するものです。

合併症として尿失禁、勃起不全などがあげられます。前立腺癌は、早期発見の傾向にあるとはいえ、まだまだ高齢の方に多い疾患であり、その方々は様々な基礎疾患を持っている場合があるという特徴があります。

他の癌にくらべ進行が比較的緩やかで、また男性ホルモンを抑えるという内分泌(ホルモン)療法が非常に有効という側面を持ちあわせているため、平均余命が10年を切る70歳代中~後半以降の高齢の方には、その方の基礎疾患や身体への手術の侵襲も考え、内分泌療法をお勧めすることがあります。

内分泌(ホルモン療法)は、前立腺癌が男性ホルモンの作用で増殖することから、これを抑えることにより癌を治療しようとするものです。早期から転移のある進行性のものまで、あらゆる状況に対して適応があります。精巣からの男性ホルモンの放出を阻止するため、LH-RHアゴニストを定期的(1ヶ月もしくは3ヶ月毎)に注射する、もしくは精巣自体を手術で取り除く「除睾術」が基本的に行われている方法です。

また、これらの治療で除くことの出来ない副腎からも分泌される男性ホルモンの働きを、前立腺細胞で直接抑える抗アンドロゲン剤の投与も行われています。このLH-RHアゴニストと抗アンドロゲン剤を併用する方法(CAB療法、もしくはMAB法と呼ばれています)が近年行われるようになり、良好な治療効果をあげています。

そのほか、女性ホルモン製剤の使用も行われています。根治的前立腺摘除術に比べて手術侵襲がないことから、容易に行なえる治療です。しかしながら、副作用として勃起不全、肝機能障害、心・血管系障害などが起り得ること、また、長期の治療により内分泌療法に抵抗性の癌が発生してくる「再燃」と呼ばれる状況になり得る問題も残されています。

放射線療法は、早期の癌においては根治的前立腺摘除術に匹敵するといわれ、最近では前立腺内部に放射線の線源を埋め込む方法も注目され、行われてきています。また、根治的前立腺摘除術後の局所再発や内分泌抵抗性の腫瘍に対して、また進行癌における骨転移巣の除痛や神経圧迫の解除を狙った治療としても、しばしば体外からの放射線照射治療が行われています。

化学療法は、現時点では他の治療法に比べ効果はあまり期待できず、内分泌抵抗性腫瘍に対する新たな薬剤を用いた治療の検討がなされているところです。先にものべましたが、高齢で基礎疾患を持つ症例が多いことから、各治療の長所短所をふまえ、ひとりひとりにどの治療が最適か十分検討し相談したうえで治療が開始される必要があります。

早期発見・早期治療!

1995年の厚生労働省の推定では、1990年を基準とした2015年の癌死亡者数の増加率は、他の癌を抑えて前立腺癌が最も増加し、約4倍になると推定されました。前立腺癌には、発見のために非常に有効な、前立腺特異抗原(PSA)があるため、この採血検査によって、早期発見・早期治療による予後の改善が図られています。50歳を過ぎると急激に前立腺癌の罹患率が上昇します。

厚生労働省の予想を実現させないため、50歳を過ぎたら年に一度、積極的にPSAの採血をされるよう、われわれ医療従事者は癌の早期発見・早期治療のための普及活動に力を注いでいるところです。

精巣腫瘍

精巣腫瘍について

陰嚢内にある精巣(睾丸)にも、腫瘍が発生します。この病気も泌尿器科で扱う腫瘍の一つです。発生率が人口10万人当り約1人と稀な病気ではありますが、20~40歳代に発生のピークがあるという若年発生癌であることや、転移があっても70~80%の症例では抗癌剤の治療により完治が期待できるという、特徴のある重要な疾患と言えます。

症状について

徐々に大きくなってくる、痛みを伴わない精巣の腫大が、この腫瘍の特徴です。しかし、大きくなるにつれて周囲の組織が引っ張られたり炎症を合併したりすることで、痛みがでる場合もあります。リンパ節や肺、脳転移を起こしやすいため、腰痛や咳、血痰、呼吸困難、頭痛、嘔吐などの転移巣から引き起される症状で発見されることもあります。

診断について

まず診察により、精巣の形状を確認し、精巣上体(副睾丸)の炎症性疾患との鑑別をします。精巣腫瘍が疑われたときは、超音波検査にて精巣内部や周囲組織の異常を観察します。非常に有用で簡便な検査です。 さらに、CTやレントゲン撮影を行い、精巣の状態のみならず、転移の有無を調べていきます。

精巣腫瘍では、診断に非常に有用な腫瘍マーカーといわれる採血検査があります。α-胎児蛋白(AFP)とヒト絨毛ゴナドトロピン(hCG)です。乳酸脱水素酵素(LDH)も診断に役立ちます。これらの値の異常上昇は、診断に有用なばかりでなく、腫瘍の組織の推定や、治療方針の決定、治療の効果の判定にも役立ちます。触診、超音波検査などの画像診断で精巣腫瘍が疑われたときには、腫瘍マーカーの採血をした後に、すみやかに治療を開始します。

治療について

精巣腫瘍には、様々な癌組織があるため、その組織の違いや癌の広がり、転移の有無によって治療方法が違ってきます。したがって治療は、まず病変のある精巣を摘除して癌の病理組織型を確定するために「高位精巣摘除術」が行われます。

病理組織診断により、精巣腫瘍は「セミノーマ」と、それ以外をまとめた「非セミノーマ」の二つに大きく分類されます。組織型や転移の状況により、細かく病期が決められており、各々の病期に応じて経過観察、リンパ郭清術、放射線療法、化学療法の治療が行われます。転移がどんなに進んでいても、様々な抗癌剤を用いた化学療法が有効な症例が多いので、積極的に治療を行って完治を目指します。