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病気について知る

糖尿病

2023年12月18日

糖尿病とは

糖尿病は、糖代謝の異常により、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が病的に高くなることでさまざまな合併症を伴う危険性のある病気です。本来、ブドウ糖は各器官のエネルギー源であり、血液中のブドウ糖濃度は一定範囲内に調整されておりますが、その調整能力(耐糖能)が低下することにより血糖値が病的に上昇した状態を糖尿病と言います。

調整能力(耐糖能)の低下は、膵臓のランゲルハンス島から分泌されるインスリンというホルモンの作用が低下することにより起こります。糖尿病という病名の由来は、尿中にブドウ糖が漏出することで、尿が甘くなる状態(尿糖)から名付けられています。

分類

糖尿病は、耐糖能が低下するメカニズムによって1型糖尿病と2型糖尿病に分類されます。

1型糖尿病

膵臓のランゲルハンス島でインスリンを分泌しているβ細胞が死滅することが原因でおこる糖尿病で、ほとんどの場合20歳までに発症します。インスリンがほとんど分泌されないため、毎日、インスリン注射をしなくてはならない病気です。自己免疫の異常が主な原因と言われておりますが、正確な発症メカニズムは明らかになっておりません。

2型糖尿病

インスリン分泌の低下とインスリン感受性の低下の両方の原因からなる糖尿病で、糖尿病全体の9割を占めます。1型糖尿病と同じく、正確な発症メカニズムは明らかになっておりませんが、遺伝的な因子の影響と生活習慣によるところが大きいとされ、それらの要因がからみ合って発症すると考えられる生活習慣病です。

症状

自覚症状として、多飲と多尿があります。発症初期には、こむらがえりなどの神経症状がある場合もあります。また、慢性期になるとさまざまな合併症が発症したりします。

合併症

糖尿病の三大合併症といわれるのは、糖尿病性神経障害・糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症です。

糖尿病性神経障害

両足先のしびれ、痛み、異常な感覚、さらには同部の感覚が鈍くなり、足壊疽の原因にもなります。他に、便秘や下痢などの胃腸障害、発汗、起立性低血圧、インポテンツなどの自律神経が障害されることもあります。

糖尿病性網膜症

網膜は、眼球の内膜を覆っている光を感じる膜のことで、酸素供給のための毛細血管が張りめぐらされています。糖尿病になり、毛細血管がふさがれ酸素の供給が困難な状態になっていくと、その状態を補うため病的な新生血管(新しい血管)が出来ます。新生血管は非常にもろく出血しやすいため、さまざまな眼の障害が発現し、最終的には失明に至る場合もあります。

糖尿病性腎症

腎臓の糸球体は血液をろ過する部分で、老廃物の除去に重要な働きをしています。糖尿病が進行することで、糸球体にある毛細血管がふさがり、糸球体自体の数が減少し腎機能の低下が起こります。腎機能が低下すると、尿の中にたんぱくが出てきたり、むくみや高血圧などが引き起こされます。さらに進行すると慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)から尿毒症となり透析が必要となります。

検査

血液検査(生化学検査)では、血糖値、HbA1c、75g経口ブドウ糖負荷試験、グリコアルブミンなどの検査があります。血糖値は、朝起きてから食事を摂らずに測定する空腹時血糖と、どんな時に測ってもよい随時血糖が評価の対象となります。HbA1cは、過去1~2ヵ月の血糖値の平均を表すとされている検査で、6.5%未満をコントロール良好とします。

75g経口ブドウ糖負荷試験は、ブドウ糖75gを含んだ溶液を飲み、血糖値、尿糖、血中インスリン値などを時間経過に従い測定します。グリコアルブミンは、最近2週間の血糖値の平均を表すとされていますが、臨床成績での有効性は明らかになっていません。確定診断は、空腹時血糖と75g経口ブドウ糖負荷試験の値により診断されます。

空腹時血糖(mg/dl) 2時間後血糖(mg/dl)
正常型 110未満 140未満
境界型 126未満 200未満
糖尿病型 126以上 200以上

糖尿病性網膜症の診断には、眼底検査やフルオレセイン蛍光眼底造影などの検査を行います。糖尿病性腎症では、尿の検査により尿一般検査や尿中アルブミン測定を行ったり、腎臓の超音波検査(エコー)を行ったりします。時には、確定診断のため、腎臓生体針検査(腎生検)といって、腎臓に直接針を挿入し組織を抜き取り顕微鏡で調べる病理検査を必要とする場合もあります。

治療

基本となる治療法は、食事療法と運動療法です。これらでも改善がない状態であれば、薬物療法が加わります。

食事療法

生活強度により1日の総カロリー量を計算し食事量を設定し、各栄養素のバランスが考慮された栄養指導に基づいて行われるべきです。

運動療法

いきなり激しい運動は避け、医師の指示に従って自分に合った適度な運動メニューを作り実行することで、筋への糖の取り込み率を高め、インスリン抵抗性を改善する働きもあると言われております。

薬物療法

大別して経口血糖降下薬とインスリン注射があります。経口血糖降下薬は、スルフォニルウレア剤(SU薬)、ビグアナイド剤(BG薬)、αグルコシダーゼ阻害剤(αGI薬)、チアゾリジン系誘導体(TZD薬)などがあり、それぞれに特徴があります。

インスリン注射は、ペン型注射器により1日数回皮下注射によってインスリンを注入します。いずれの薬剤を使うかは、各々の病態により様々ですので、主治医とご相談ください。現時点では、まだ糖尿病は完治できない病気ですので、通院を中断しないことが一番大事なことです。